だから難しいMOT(技術経営)シリーズ
2.余剰の経営資源の使いまわし
新規事業の狙いどころは、過半数が反対する斬新なアイデアでちょうどよい・・・
とは言うものの、全く門外漢な新分野に無謀に挑む計画には失敗しか予想できません。
ではどうすればいい?ここで象徴的な成功例を見てみましょう。
(1) 高画質を追及していた写真フィルムメーカーが、化粧品事業に新規参入。
(2) シロアリ駆除の作業会社が、新規事業として耐震補強改築事業で成功。
※あえて具体的企業名は割愛します。
これらの成功例の成功の秘訣は案外わかりやすいですよね。どちらも、新旧事業で共通の“強み”が活かされています。
(1)の会社は“ナノ分散技術”を活かして製品の性能を高めています。
(2)の会社は現場作業者が“俺たちは床下をたくさん見てきた”と自信を持っています。
つまり既存事業の“強み”を活かしてこその新規事業なんです。
今の主力事業では、様々な技術情報や営業経験などが蓄積されています。お客様の信頼やブランドといった価値も高められています。この様な、ヒト・モノ・カネに続く大事な経営資源の中で、完全に使いこなせていない、あるいは転用可能なのにまだ転用できていない部分を、“余剰の経営資源”を呼ぶことにします。そして成功しやすい新規事業の解の一つは、この“余剰の経営資源”を全く違う分野で使いまわす提案ではないかと考えています。
“余剰の経営資源”は、ひと昔前の流行り言葉『コアコンピタンス経営』で整理することもできそうです。C.K. プラハラードらは著書「コア・コンピタンス経営」で、コアコンピタンスとは、①他社が真似できない(模倣可能性)、②他分野に応用できる(移動可能性)、③代替が効かない(代替可能性)、④希少価値が高い(希少性)、⑤長期に競争優位を保てる(耐久性)のそれぞれの観点で高く評価できる、企業に内在する中核能力であって、持続的な競争優位の源泉であると述べています(私的解釈です。)
同書では、シャープの液晶技術やホンダのエンジン技術等が好例として挙げられていますが、私は元研究者として、“シャープの液晶技術”、“ホンダのエンジン技術”をそのまま文字通りで捉えてしまうと間違えてしまうと考えています。それらの要素技術を支えている“現場の力・ノウハウ”は具体的には何か?これこそが蓄積された“余剰の経営資源”であって、“コアコンピタンス”であると信じています。
でも、この様な“余剰の経営資源”は外部からは見えにくく、つい見落としがちです。一方、当事者による手前味噌な価値判断は客観性にかけることもしばしば。正確に見つけること自体が難しいかもしれません。
新規事業を考える前にまず、次の問いかけについて考えてみましょう。
あなたの会社の“余剰の経営資源”は何ですか?
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