だから難しいMOT(技術経営)シリーズ

1.新規事業は始めること自体が難しい

 新規事業の最初の一歩、それは青写真を描くことではないでしょうか。
 詳細な部分はとりあえず置いて、やりたいことのアウトラインを描いて目標を定めなければ、何も始まりません。営業なら、マーケティングミックスを活用して新しい顧客を探したり、あるいは斬新なビジネスモデルのたたき台を作ってみたり。開発なら、新製品の商品コンセプトや開発計画・事業計画の素案を立案して、試作品を検証したり、その事業のIRR分析してみたり。様々な立場の方が様々なフレームワークを活用して、新規事業の青写真を描いていきます。そして多くの会社では、経営層に提案、承認を求める過程が最初の一歩になるでしょう。少なくとも大学卒業後、新規事業一筋に苦しんできた私はそうでした。
 そんな新規事業の最初の一歩について、私の社会人人生に大きな影響を与えてくれた先生から、今も忘れない様にしている金言を頂きました。すなわち

『新規事業の提案は、10人中3人ぐらいが関心を示すくらいでちょうどいい。』

 私的解釈を加えます。過半数がすぐに賛同する様な提案は、実は新規性が薄く(どっかで聞いたことがあるから、賛成が得やすいのかも?)、かといって、誰一人賛成しない様な提案は、確実に何かが間違っている。そんな風に理解していました。
 特に新規提案に関する反応がすこぶる良い場合、それは多分誰でも思いつく内容で、既に誰かが始めている可能性が高く、つまり自分の成果が世に出る時は時すでに遅し。最初から価格競争に巻き込まれる可能性が高く、労多くして功少なくなる危険があります。
 でもちょっと待ってください?経営層で過半数の賛同が得られない提案って、そもそも着手できますか?そうなんです。もしかしたら大当たりかもしれない斬新な企画・提案は、経営層の賛同を得にくく、過半数の賛同を得るために安易に修正した提案は、新規事業としての魅力が失われかけている。新規事業の最初の一歩は、そんなジレンマを抱えているかもしれません。よくオーナー企業が粘って成功させた大ヒット商品がテレビ番組等で賞賛されていますが、これは、この種のジレンマと無縁でいられたのが一番の成功の秘密だったのかもしれませんね。
 実は、新規事業を阻む最初の壁は着手前にいきなり出現しています。反対7人から2人以上を、安易に媚びることなく説得して、賛成してもらう努力が最初に取り組むべき難題なのかもしれません。

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